さらに余談になりますが韓国人の話す日本語を聞く機会があれば尊敬語の使い方に注目してみてください。他の外国人と比べてはるかに上手です。むしろ下手な日本人よりもうまかったりします。これは前述したように韓国語にも同じ尊敬語の形式があるからなのです。しかも韓国は儒教の国ですから日本よりも上下関係に厳しいようです。だから尊敬語の使いこなしも日本人より徹底しているのでしょう。
なぜか余談ばかりが進んで必要なことを書かないのが私の悪い癖であることは、ここまで読んで来られたみなさんならもう悟られたことと思いますが、今回も重要なことをまだ言っていません。それは日本語と韓国語の尊敬表現の決定的な違いについてです。例として、自分の家に電話がかかってきた場面を考えて見ましょう。まず、日本の場合。「お父様はいらっしゃいますか?」「いえ、父はまだ帰っておりませんが…」と、こんな感じの会話になるでしょう。ところが(!)韓国の場合。「お父様はいらっしゃいますか?」「いえ、お父様はまだ帰っておられませんが…」
はい、このように自分の側の人物でも尊敬語を使うのです。相手を敬って、自分の側の者はへりくだる、というのが日本式ですが韓国では相手側であろうと自分側であろうと目上の者であれば尊敬語を使うのです。もし韓国へ出張に行き、中途半端に韓国語を使って日本式に「社長はおりません」などと答えると相手が日本の文化を知っているのならともかく、たいていの場合「なんだこいつは。自分の会社のボスを呼び捨てにするとは!」と思われてしまうのです(たぶん)。逆に日本で「私たちの社長様は今いらっしゃいません」などと言われるとかなり違和感を覚えますよね。ちょうどそんな感じでしょう。
さて、この節の題である「こんにちは」に戻りましょう。最後の(ムニカ)は前章で述べた通り(ムニダ)の疑問形ですね。つまり全体としては「安寧・である・られ・ますか」→「安寧でいらっしゃいますか」となるわけです。要は「お元気ですか?」ということですね。これが韓国語の「こんにちは」なのです。これでこの挨拶が一日中使える理由がおわかりになったと思います。また、アンニョンハセヨ?の? (セヨ?)は、? (シムニカ?)のやや親しみのこもった柔らかい言い回しです。意味は変わりません。
「こんにちは」ごときに、くそ長い話をしておきながら書き足りない余談がまだあります。あと少しだけ書かせてください。この「セヨ?」を疑問形でなく普通に「セヨ」と言うと「~してください」の意味になるのですが、これを聞くと私はいつも日本語の「~せよ(命令)」を連想してしまいます。これも少し日本語に似ていますよね。
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はじめに 日本人にとって一番簡単な外国語
第0章 ハングルってなに?
第1章 日本でも韓国でも発音が同じ単語
第2章 日韓文法の共通点
第3章 ハングルの読み方
第4章 超基本単語
第5章 簡単な会話
第6章 日韓漢字変換法則
第7章 文章を組み立てよう
第8章 実践練習
第9章 おわりに
おまけ 韓国語なんでもQ&A
コラム 日本におけるハングルの諸事情
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